育休・産休の実務おさらいシリーズ①

第1回:そもそも産休・育休とは?違いと全体の流れ

~妊娠・出産の申し出があったとき、まず会社がすべきこと~

1. はじめに:実務での“つまずき”をなくすために

育児休業や産前産後休業は、多くの方に知られている制度ですが、いざ実務となると「何となく知っている」だけでは対応が難しい場面もあります。
たとえば、産休と育休の違いがあいまいなまま説明してしまったり、必要な社内手続きが抜けていたりすると、従業員との信頼関係が揺らいでしまったり、思わぬトラブルにつながることも。

最近では、妊娠・出産の申し出があった際の「個別周知・意向確認」が義務化され、企業側の対応がますます求められるようになっています。

このシリーズでは、そんな「よくあるつまずき」を防ぐために、制度の基本から手続きの流れ、もらえるお金や社会保険の仕組みまで、段階的に整理していきます。
第1回では、「産休」と「育休」の違いや、取得までの流れを確認します。

2. 「産休」と「育休」の違いとは?

意外と混同しがちなのが、「産前産後休業(産休)」と「育児休業(育休)」の違いです。

項 目産前産後休業(産休)育児休業(育休)
法的根拠労働基準法育児・介護休業法
対象者妊娠・出産する女性労働者子どもを育てる男女労働者
取得期間出産予定日の6週間前(多胎の場合は14週間前) ~ 出産後8週間原則、子の1歳まで(認可保育園に入れない等の要件を満たせば最長2歳まで延長可)
取得の義務等出産後8週間は就業禁止(原則)労働者の申し出による

ポイント

  • 産休は女性のみ対象。母体保護の関係で、原則、産後8週間は就業禁止と法律で定められています。
  • 育休は男女ともに取得可能で、本人の申し出により取得する制度です(申し出を会社は拒めない)
  • 育休は労使協定により、対象外の労働者(入社1年未満等)を定めている場合もあります。

3.【法改正ポイント】妊娠・出産時の「個別周知・意向確認」とは?

対象となるのは、、、
・本人が妊娠・出産の予定を申し出たとき
・配偶者の妊娠・出産を申し出たとき

会社がおこなうこと
・育休制度の内容や申し出方法、社会保険料免除、育児休業給付金について個別に説明
・従業員の意向確認や希望時期などのヒアリング
※対応記録を残すことが望ましいです。

個別周知・意向確認には、厚労省作成のひな型の活用も便利です。
https://view.officeapps.live.com/op/view.aspx?src=https%3A%2F%2Fwww.mhlw.go.jp%2Fcontent%2F11900000%2F001472867.pptx&wdOrigin=BROWSELINK

4. 産休・育休のスケジュール全体像を把握する

実務では、妊娠・出産の申し出を受けた後、どのような流れで休業に進むかを押さえておくことと安心です。
以下は標準的なスケジュール例です(女性労働者の場合)

妊娠判明 → 妊娠報告 → 産前休業開始(出産予定日の6週間前以降、申し出に基づき休業が必要) 
   ↓ 
出産 → 産後休業開始(8週間)
   ↓ 
育児休業開始(原則子の1歳まで/延長は最長2歳まで=延長要件:認可保育園に入れない等) 
   ↓ 
職場復帰

なお、2022年4月以降の法改正で登場した「産後パパ育休(出生時育児休業)」など、男性の取得制度も併せて理解しておく必要があります(第2回以降で詳しく解説します)。

5. 申出を受けたら企業がすべき対応 

人事総務が行う基本フロー=大まかに
・申出内容の確認・記録(本人との面談含む)
・社内手続き(就業規則や社内ルールに基づく)
・社会保険・雇用保険の事務手続き準備
・書面での通知や承認(必要に応じて)
・社内関係者への情報共有(上司・部署等)
※ 詳細な手続きは次回以降で一つずつ解説します。

6.よくある誤解と注意点

・「産休・育休は自動的に始まる」 → 申出・手続きが必要

・「就業規則に育休制度が書いていない=取得できない」と考える
 →  法令に基づく制度なので、就業規則に定めがなくても取得できます

・「契約社員やパートには適用されない」
 →  一定の条件を満たせば非正規社員でも育休取得可

・「制度の周知は、全体で済ませた」 → 個別対応が義務(2022年改正)

7. まとめ:最初の対応が大切

妊娠・出産の申し出があったとき、
最初の一歩は、個別周知・意向確認ができているかどうか。
前提として、誰に相談・申し出れば良いか、周知されていることも大事です。

制度そのものの理解とあわせて、「いつ」「誰に」「何を」伝えるかを明確にしておくことで、
安心して制度を利用できる職場づくりにつながります。

📌次回:第2回は「産休に入る前にやることリスト」!

人事労務に関するご相談は
お任せください

人事労務に関するお困りごとがありましたら、
まずはお気軽にご相談ください。

Plant